鋭い観察眼と幸運なタイミングでのモシリュウの発見(国立科学博物館③)
【モシリュウの上腕骨】
いろいろと恐竜や化石に関する博物館などを回ってきて、改めて東京・上野の国立科学博物館を見たくなった。ちょうど、ゴールデンウィーク。遠くに出掛けるには混雑がうっとうしい。しかも、国立科学館は常設展は18歳未満と65歳以上は無料。入館料に関しては、いろいろと論議もあるだろうが、ここはありがたく勉強しにいくことにした。無料はまあ、高齢者も勉強しろ、ということだろうな、と筆者自身は理解している。ちなみにお隣の東京国立博物館の平常展は満18歳未満、高校生以下と70歳以上が無料だ。これ案外、高齢者には知られていないような気がする。
今回は日本館の3階北翼、「日本列島の生い立ち」から見始めた。改めて「フタバスズキリュウ」に感動する。「フタバスズキリュウ」そのものが首長竜であったとしても、この全身骨格標本があってこその、現在も続く日本の恐竜ブームだと筆者は思うが、いかがだろう。

【ウタツサウルスの頭骨】

【ウタツサウルスの尾椎、骨盤、前肢】
「フタバスズキリュウ」に続くように、「ウタツサウルス」の化石が並んでいた。分類についてはいろいろな考えがあるようだが、国立科学博物館では「世界最古級の魚竜」と紹介していた。魚類の起源はなぞだったというが、ウタツサウルスは最古級の魚竜であるとともに、後頭部や骨盤などに陸生爬虫類の名残を留める貴重な種であると、説明板に記されていた。
「ウタツサウルス」は現在の宮城県南三陸町(旧歌津町)で最初に発見されたので、この名がついた。
同博物館で展示されていたのは1982年に現在の宮城県釜石市(旧雄勝町)で発見されたものだ。同博物館では産出から化石のクリーニング、研究に参加した。産出された大沢層は三畳紀前期(約2億4500万年前)の海で堆積した。その頁岩はとても硬いのに、化石は薄くもろく、クリーニングには長い年月と労力を要したと説明されていた。

【ウタツサウルスの産状標本】

【高山市で産出したイグアノドン類の歯】
さらに岐阜県高山市荘川町大黒谷の手取層群で発見された植物食恐竜「イグアノドン類」の歯の化石があった。「イグアノドン類」の歯は、手取層群のいろいろな場所から発見されているという。

【コンボウガキの礁のコーナーの片隅に置かれたモシリュウの骨】
そして、「コンボウガキの礁」のコーナーに、さりげなく、しかし誇らしげに展示されていたのが、「モシリュウ(茂師竜)」の上腕骨の一部の化石だ。これこそ、現在の日本国内で初めて発見された恐竜の化石だ。説明板によると、1978年に岩手県岩泉町茂師で露出していた約1億2000万年前の白亜紀前期の地層から見つかった。陸に住んでいた恐竜の骨が、サンゴ礁の海に運ばれたものだ。
見つけたのは、当時同館の研究員だった加瀬友貴さん。地質調査に出掛けた途中で、宿泊する宿の向かいにある崖を見上げていて、この化石が顔を出しているのを見つけた。
その少し前に別の研究者が同じ場所を見たときには、化石は地層に埋もれていて見えなかったというし、少し後であれば崖と一緒に崩れてなくなっていたかも知れない。それについて、説明板では「鋭い観察眼と幸運なタイミングの合わせ技での発見であった」と記してある。
1970年代まで、「現在の日本では、恐竜の化石は出ない」というのが通説だった。それがこの発見以来、恐竜の骨の発見が相次ぐようになった。
ただ、残念なことに見つかった化石の状態が十分ではなく、現在では竜脚類以上の分類は難しいと考えられている。「モシリュウ」の名前はあくまで通称。学名ではない。
(取材・2026年5月2日)
国立科学博物館メモ
〒110-8718 東京都台東区上野公園7ー20
ハローダイヤル 050-5541-8600
休館日
毎週月曜日(日・月曜日が祝日・休日の場合は火曜日)12月28日から1月1日
くん蒸期間(6月下旬ごろ)
午前9時から午後5時まで(入場は午後4時半まで)
常設展入館料
一般・大学生630円
小・中・高校生
並びに18歳未満と
65歳以上
障害のある方とその付き添いの方1名は無料
(館内ガイドによる)