7万年の世界標準の年代ものさし(福井県年縞博物館①)
【福井県年縞博物館】
福井県には世界に誇ることができる博物館が2つある。一つがおなじみの福井県立恐竜博物館、そしてもう一つがここ福井県年縞(ねんこう)博物館だ。
年縞といっても、説明が難しい。
博物館の説明によれば、「季節に応じて異なる物質が堆積することで形成された縞模様のこと」。とりわけ、福井県の三方五湖の一つ水月湖は、水深が深く、直接流れ込む川がないことなどが原因で「過去7万年間45メートルにもわたって堆積した、世界でも傑出した規模をもつ」という。
どう役に立つのか。
地質学や考古学では現在、放射性炭素年代測定という技術が使われる。放射性炭素(炭素14)が5730年ごとに半分となるという特性をもつことに着目した技術だ。1970年代後半に加速器質量分析法が実用化され、それまでより圧倒的な短時間で、微量な資料の年代を測定することが可能になった。
その一方で、放射性炭素年代測定法が正確であるためには、大気中の二酸化炭素に含まれる放射性炭素の濃度が時代によらず、一定である必要があることが分かった。しかし、実際には濃度は厳密には一定でなく、時代によって変動していた。
このため実際の暦年代と、放射性炭素分析による年代のずれがあることが分かり、そのずれを較正するための較正データの整備が世界各地の研究機関によって進められるようになった。
水月湖の年縞は、その較正データとして役だっている。実際に役立つようになるまでには、試行錯誤が続いたが、現在は年代決定の世界標準となる「Intcal(イントカル)13」では水月湖の年縞データが大きく採用されている。水月湖の名は、この分野で世界で不動なものになっているという。世界のトップレベルの研究者たちの30年にわたる努力の成果だ.

【7万年分の年縞の始まり】
と長々と、引用が続いてしまったが、まあ、木の年輪が7万年分続いている、と考えればいいようだ。
年代の「標準」のものさしになるし、さらに、環境変動の記録にもなっているというから、面白い。
この博物館では、展示のために水深34メートルの湖底で新たにボーリングを行い、45メートル7万年分の「年縞」を採取した。それを薄く切り分け、ドイツに送った。ポツダム地球科学研究センターのM・ケーラー氏の手で、年縞を凍結乾燥させて水分を除去。エポキシ樹脂で固めて硬くなった年縞を、サンドペーパーと砥石で1ミリの20分の1の薄さに研ぎ上げ、「年縞ステンドグラス」を作成し、それを展示している。
この45メートルをただ、眺めるだけで楽しい博物館だ。
(取材・2026年4月10日)
福井県年縞博物館
〒919-1331 福井県若狭町鳥浜122-12-1 縄文ロマンパーク内
0770-45-0456
休館日
毎週火曜日
年末年始(12月29日~1月2日)
午前9時から午後5時まで(入場は午後4時半まで)
観覧料
一般 500円
小学生・中学生・高校生 200円
小学生未満および70歳以上は無料。70歳以上は年齢を証明できるものを提示する。
(利用案内による)