獣脚類としては日本初の発見だった「ミフネリュウ」(熊本県・御船町恐竜博物館①)
【御船町恐竜博物館前の恐竜像】
熊本県はひとつの県で、二つの恐竜専門の博物館をもつ希有な県だ。一つが前回までの「御所浦恐竜の島博物館」、もう一つがこの博物館だ。どちらも内容が充実した、訪ねてよかった博物館だった。
御所浦に行くには船に乗らなければならないが、この博物館は九州自動車道御船インターから自動車で約10分と便利だ。
ただし、両方の博物館を1日で見ようと思うと、ちょっと厳しいと思う。この博物館から、御所浦島への船が出ている港までが、どの港を選ぶにしてもちょっと遠い。
御船町恐竜博物館の歴史は同館のホームページによると、1979年に遡る。
この年の8月に御船町上梅木で早田幸作・展生親子が歯の化石を発見した。1984年になって当時の横浜国立大学学長の長谷川善和学長らが、この化石が肉食恐竜の化石であると日本古生物学会で発表した。
1990年以降、数々の恐竜発掘調査が行われるようになった。1998年4月には博物館が開館している。天草地域での恐竜の化石発掘の最初が1997年だったから、ずいぶん先行していたことになる。現在の建物にリニューアルしたのが2014年4月のことのようだ。数々の特別展も開かれている。
人口約1万7千人の町が博物館、それも恐竜に特化して運営していくことは大変なことだと思う。それでも、年間入場者は毎年十数万人になっていると職員の方からうかがった。たいしたものだと思う。
まだ、せっかく化石が見つかっても、クリーニング作業に時間がかかりなかなか成果が出せないと、苦労を語っておられた。2025年12月には福井県立大学恐竜学部と連携協力協定が結ばれた。その成果を期待したい。

「ミフネリュウ」の歯の化石
さて、博物館の展示室に入ってすぐのところにあるのが、1979年に発見された件の恐竜の歯、「ミフネリュウ」についての説明だ。樺太(現・サハリン)を除く、現在の日本国内では初めての恐竜化石の発見は、1978年の岩手県での「モシリュウ」(竜脚類)の発見だった。「ミフネリュウ」は、初の肉食恐竜(獣脚類)の発見だったことになる。
飾られている歯は立派なものだ。長さ7・3センチ、幅2・3センチ、厚さ1・2センチとあった。
残念なことに「ミフネリュウ」は通称であって、学名は付けられていない。恐竜学(東京大学出版会)では、「メガロサウルス科? 属種未定」、あるいは「獣脚類以上の診断を下すことはできない」としている。確かに、いかに立派な歯であっても、歯一本では難しいだろうな、と思う。
御船町など熊本県中央部に分布する御船層群は、白亜紀後期にアジア東縁の陸から浅い海の環境で堆積した地層だ。約2000メートルの厚さがある。「基底層」「下部層」「上部層」に分けられる。「ミフネリュウ」はこのうち「下部層」から産出した。海成層からの発見であり、遊離した歯だけが流されて化石化したものと考えられている。この「ミフネリュウ」の発見がきっかけとなって、「上部層」で多数の恐竜が発見されることになったわけだから、「ミフネリュウ」の功績は大きい。

御船町恐竜博物館の外観
(取材・2026年7月1日)
熊本県・御船町恐竜博物館
〒861-3207 熊本県御船町御船995-6
096ー282-4051
休館日
月曜日(月曜日が祝日の場合はその翌日)
年末年始
ゴールデンウィークや夏休み、特別展開催時などは月曜日も開館することがある。詳しくはホームページの休館日情報を。
午前9時~午後5時(入館は午後4時半まで)
観覧料
大人 500円
高校・大学生 300円
小・中学生 200円
(博物館ホームページによる)